ーーバシャーン!!




上から大量の何かが降ってきた。




ベトベトして皮膚にまとわりつく感じ……これは、油?





ゆっくりと上を見る。




コンクリートで隙間のない天井だったはずなのに、上には正方形の穴が六つ開いていた。




その中にバケツがあってその口が僕らの方に向いている。





つまりひっくり返っているのだ。




「これから軍服を配る。お前らそれに着替えて軍用トラックに乗れ。目的地まで案内する」



そうして僕達は早々と着替え、トラックに乗せられてしまうのである。





❤︎




トラックに揺られながらむせ返る人混みの匂いに吐きそうになりながらも座っていた。





狭いトラックの中、電気も豆電球だけ。中は真っ暗に近い。窓もない。



大人が乗っているとしたら壁のある運転席前にいる軍人の運転手だろうか。



そっとその壁から覗く。




さっきの大男だ。




ふと相席にいた軍人と目があった。





すごい形相で睨まれて尻込み。




僅か数秒でその壁の穴から目を伏せることになる。





情けないな。




こんな時もう少し頭がよければ、大人は後ろ側の席には誰もいないから、逃げることが可能なのだろう。





だけもそれも虚しく出来るはずがなかった。





何故ならその計画を僕がたてられないからだ。






そんな調子で周りの子供達と同じように意気消沈していたらーー。





「なぁ、お前暇?」





「え?」と思い右を振り向くと、僕を覗き込む金髪の男の子が僕を覗き込んでいた。




年齢は僕と同じぐらいだろうか。





「俺ユージオ。お前名前は?」





こんな時に呑気な奴だ。





誰かは知らない奴に名前を教えるなと言われているが、もう生きれないかもしれない。





「ロバート」




下の名前を口にした。




「へぇ、お前って意外に頑固そうな名前してんだな」





この少年ユージオは何故かこの絶望的状況で、楽しそうにしている。





何故そんなに楽しそうなのか。





「ねぇ、なんで笑ってるの?」




どうしても不思議だったからユージオに尋ねた。




「両親と同じ所へ行けるから」




言葉が詰まった。




「……ごめん」




「いいよ。気にすんなって……どうせ俺も死ぬ運命だろうなって少し思ってたし」




ユージオは話し続ける。




「だけどさ、人間っておかしいよな。死に際になるとなんだか人恋しくなるのかも……だって今こうして誰かと話をしたくなってるんだから」




ユージオは胸ポケットから何かを取り出した。





「なぁ……最後のお願いで悪いが、友達になってくんねぇか?これが友情の証だって事で」




何故か持っていた赤い飴玉。




本人曰く、「お母さんから死ぬ直前にもらった飴玉」だと。




「元々きてた服から急いでくすねてきたんだ」




「こんなもの受け取れないよ……」




ユージオは僕の話を聞かずに、強引に僕の手の中に収めた。




「お願い……どうせ死ぬならせめて最後だけ楽しい思い出を残したいんだ」





そう言われて仕舞えば受け取るしかなかった。



渋々僕はその雨を手の中に収め胸ポケットに。




「さぁ、降りろ。ここが目的地だ」





そんなやりとりをしていると、どうやら目的地に着いたみたいだ。




「さぁ行こう。ロバート」




コイツも本当は死にたくないんじゃないかとふと頭の中を過ぎる。



だってユージオが僕を握り締める手はこれまで経験した事がないぐらい強く握りしめられてしたからだ。



❤︎