ゆうとが顔を見せた後そんな会話だったと思う。



一言二言話して、中に入れてもらえることに。




ゆうとのお母さんは「じゃあ、私は下にいるから」といってその場を去ってくれた。




ゆうたの部屋はボロボロだった。




以前にもゆうとの部屋には来たことがあるけれど、こんなに散らかってはいなかった。



猛獣が暴れたかのような部屋を糸を縫うように歩く。



そして丸机が置いてある机に僕達二人は向かい合うようにして座る。




「いっとくけど、お前を憎んでるわけじゃないから」




ゆうとがふとそんな言葉を口にする。




顔を見ると口元は笑っているが、目がドス黒いといえば分かるだろうか。





「ど……どうしたの?」




暗く何か重大な事を知ってしまったかのような感じがしたのでそう聞かずにはいられなかった。




「えっと……どこから言えばいいのやら……」




そうしてゆうとはゆっくり話し始めた。





❤︎




「俺がテレビリンゴを食べた2日後ぐらいたった頃だ。俺は夢を見たんだよ」




夢を見た……?




夢を見ただけでこんな事に?




頭の中で反芻する言葉をぐっと堪えてゆうとの話を聞き入る。




「最初は荒い映像から始まったんだ。最初は夢だなそんな感覚だった。でも時間が経つにつれて分かったんだ。お母さんが見知らぬ男と手を繋いで綺麗な洋服きてデートしてるって事が」





「……え?で、でもーー」





「初めは嘘かと思ったよ。でも違っ
た。お母さんがお風呂に入ってる時見たんだ。スマホのラインを。パスワードは、言っちゃまずいけど分かってたからそれで開いたんだ。そしたらーー見知らぬ男とラインを交換してる画面が写ったんだ。生々しい会話だった」




耐えられないのだろう、目にたくさんの涙を浮かべて今にも溢れ出しそうだ。




その目は深い闇の中に浮いているみたいに。




「それだけじゃないんだっ……それだけじゃっ!!」




「……何が……あったの?」




聞きたくはなかった。




だけど聞かないという選択肢を選ぶとなるときっとゆうとは壊れてしまうと思った。




だから聞いたのだ。




でもそれがいけない質問だった。




「ラインの内容を除いて分かったんだよ。俺は実は父さんと母さんの子供じゃないって。母さんと不倫相手の子供だったて事を……知ったんだっ。俺……俺、どうしたらいいのかわかんねぇーよ……」

それはゆうとの叫びに他ならなかった。


❤︎




それからというもの僕はゆうたの家に行くのが遠のいてしまった。


ゆうたの家に行っても、本人が拒否をするからだ。




「誰とも会いたくない」と。




そして一ヶ月、三ヶ月が過ぎーー。




「ゆうとくんは残念ながらここを引っ越す事になりました」




それは先生の口からそう告げられた。




クラスのみんなはザワザワとしていた。



あんなに明るかったゆうとが不登校になる事にも驚いていたし、いじめられていた記憶も無いからだ。





「ゆうとくんに色紙を書きましょう」なんて言ってみんなにお別れの言葉を書かせていたけれど。




悪いのは完全に僕だった。




僕が腐ったテレビリンゴなんて食べさせなければこんな事にはならなかったはず。



多分あの腐ったテレビリンゴは知ったらいけない秘密を食べたら知ってしまう……きっと、いや、本当にそうなのだ。




ーーごめん、本当ごめん。ゆうと。




過ぎ去ったゆうとの家を見て涙を流して後悔という波に飲み込まれた。




fin