もう、キスだけじゃ足んない。



「遥、時間……っ、」

「まだ。あと少しだけ」


っ……なにまた受け入れてるの、私……!


「大丈夫だから。
俺に集中して、こっち見て」

「んんっ……」


甘くとけていた声が一瞬不機嫌になるけれど。


「ん、上手。キス、うまくなったね」

「ふっ、あ……」


かわいい、好きだよ。


「っ、は、もっと」

「俺の名前よんで」


いくらたくさんの女の子に囲まれたって。

いくら激しいダンスを踊ってたって。


涼しげで、無表情で、クールなままの遥が。


「っ、は……やばい、とまんな、」


私の前でだけ、こんな息を荒らげて。

やけどしそうなほど熱い手と、その目で私を求めてくれてるんだって思ったら。


「遥……すき」


私もって、遥がたまらなく愛しくなる。


「離れたくない……っ」


「っ!!」


「いっしょにいたい……っ」


首すじをなぞる唇に必死に耐えていたら、聞こえるかどうかのくらいで囁かれた小さな声。


ズキンズキンズキン。

胸がぎゅっと苦しくなって、目が熱くなるけれど、必死に目を閉じて、遥に抱きついて。


熱を、その感情を、逃す。


「胡桃……っ」

「んっ、ぅ……」


シャツのボタンが外れて、下へ下へと唇が落ちていく。

心臓が波打つのがわかって、抑えるように、またその背中に手を回す。


「胡桃……かわいい」


目、あけて。

俺のほう、見て。


そう遥が言った瞬間だった。