もう、キスだけじゃ足んない。

***


「おばあちゃーん!」

「胡桃。久しぶりだね」


その腕の中に飛び込めば、よしよしって、ぎゅうっと抱きしめてくれる。


この腕のぬくもり。小さいころからずっと大好きだった。

橘紅(べに)。私と桃華のおばあちゃんだ。


「遥くんも、暑かったでしょう?
冷たいのあるから、たくさん飲んでね」

「ありがとうございます」


翌日。

遥と私が遊びにきたのは。


「本当、いつ見てもすごいぶどうですね」


「ふふふっ、遥くんにそう言ってもらえたら私うれしいわ」


なんと、おばあちゃんとおじいちゃんがふたりでやっているぶどう農園。


広大な敷地に広がる農園に宝石みたいに瑞々しいぶどうがたくさん下がってる。

ふたりが作るぶどうは糖度が高くて、ほんとうに甘くて、おいしくて。


ぶどう狩りができる夏には、桃華はもちろん、毎年遥や杏もいっしょに遊びに来てたんだよね。

だから遥も杏も、うちの家族とはみんな面識がある。

おばあちゃんたちも、遥たちのこと、すごいかわいがってたっけ。


「ほんとに久しぶりおばあちゃん。
元気にしてた?」


「元気、元気。おじいちゃんは今日ちょっと用事でいないんだけど、ふたりで元気にやってるわ。
胡桃も遥くんとやっと付き合えたんだって?
おばあちゃんうれしい」


「もう、おばあちゃん!」


ふふふとやわらかく目尻を下げて優しく笑う。

遥の前でそんなこと言わないでよ、はずかしい……。


「でもどうしたの?
お母さんから連絡きてびっくりしたよ」


昨日のお母さんからの電話は、おばあちゃんのことで。

おばあちゃんが久しぶりに、遥と私に会いたいって言ってるって。


「今年はいつもより、たくさんのぶどうができたし、実も大きいから、1番に食べさせてあげたくって。桃華たちはドラマで忙しいって聞いたからちょっと悲しいけど、その分たくさん食べてね」


桃華たちにはおみやげ持たせてあげるからね。


「ありがとう、おばあちゃん」

「今日はお客さん入れてなくて、ふたりだけだから。存分に楽しんで」


そう言って、なぜかチラッと、ふふふっと意味深に遥を見たおばあちゃん。

それに遥はほんのり耳を赤くして、照れくさそうにしてて。


ん?


「胡桃」

「え?」


ぽかんとしていたら、ポンっと頭に遥の手が乗って、目を細めて優しく笑う。


「ふたりだけだし、いっぱい楽しもうな」

「うんっ」