もう、キスだけじゃ足んない。



「撮影の合間とか、時間が空いたら」

「ちゃんと休めてるの?」


「現在進行形で休んでるから大丈夫」


「現在進行形?」


「そ。胡桃との時間が俺の休息。
それをムダにしたくないから、家帰ってくる前にぜんぶ終わらせるようにしてんの」


家ではずっと胡桃のこと、甘やかしてあげられるように。


「っ……」


めちゃくちゃ忙しいのに。

朝も早くて夜も遅くて。

寝る時間だって少なくて、大変なのに。


ちゃんと時間見つけて課題も終わらせて。

それがぜんぶ、私のためだなんて。


「そ、胡桃のため。胡桃とたくさんイチャイチャしたいから」


「っ……」


「でも胡桃が夜やってるなんて、珍しい。
いっつも帰ってきてからやるんじゃなかった?」


「そう、なんだけど……」


今日はドレス着て、メイクもしてって忙しくて。

そんなに時間はかからなかったけど、遥が喜んでくれるかもって思ったら……。


「俺が帰ってくるの待ち遠しくて、課題なんか頭に
入らなかった?」


こっち向いて。

その言葉にゆっくりうしろをふりむく。

至近距離でぶつかる視線は、愛おしいと言わんばかりにきゅうっと細められて。


「胡桃……っ」

「っ、ん、」

「ごめん、我慢できなかった。
胡桃かわいすぎ」

「ううっ……」


軽くふれるだけのキス。


鼻がふれあう距離で甘く囁かれたら、思考がぜんぶ遥になる。

わ、私だって、私だって……っ。


「早く、遥とイチャイチャしたいから……」

「は?」


「私だって我慢してる。
でももうちょっとで終わるから、待ってて……?」


そっと遥のおでこに口づけたけれど、はずかしくて前を向く。


「……」


ううっ……めちゃくちゃ静かなんだけど……。


「……だからさぁ、あー、もうっ!」

「遥?」


なんかめちゃくちゃため息ついてる?


「ついてるよ。だれかさんが俺のことめちゃくちゃ煽ってくるから」

「え、え?」

煽るって……。


「ほんっと無理。胡桃、めちゃくちゃ好き。好き好き好き好き……」


えっ、こわい!!
なに!?


「胡桃のほうがこわいっつーの」

「ええ?」


「俺いつか、死因胡桃で死にそう」