もう、キスだけじゃ足んない。



腰が砕けちゃうかと思うほど、最初から熱くてとろけそうなほど甘いキス。

噛みつくようなキスは一瞬で、すべりこんできた舌が口の中でゆっくり動く。


「んっ、ぅ……っ」

「は、胡桃……っ」

「あ……」


ぎゅうっと抱きしめられて、熱くて荒い吐息が耳を掠めてピクッとする。


「ずっと、こうしたかった……っ」

遥……遥……っ。


応えるように、首に手を回して引き寄せる。

このぬくもりに抱きしめられると、不安も恐怖もすべてが吹き飛ぶみたいだ。

無敵になれる。

遥とまた離れることになっても、繋がっているのは心だけじゃないって思ったら、きっと……。


『つながってるのは心だけじゃないって思ったら、ものすごい心強いよ』


「はる、か……っ」

「ん……?」

「して、」

「えっ」

「私のぜんぶ、もらって」

「くる……っ」

「遥は私のだって、私に刻みつけて」

「っ!!」


小さいころからずっと。

中学のとき、私が離れている間もずっと。


芸能界に入って、たくさんのファンの子や、可愛い子に応援されて、囲まれていてもずっと。

そして、今この瞬間も。


「胡桃……」


その澄んだ瞳にはいつも私しか映ってないんだと思うと、もうどうしようもなく胸が締めつけられて。


「好き……」


この人が、好きで好きでたまらない。

溢れる。滴る。とまらない。


見つめてくる瞳の温度に、また胸が苦しくなる。

体温とか声とか、ぜんぶで補給中だけど、やっぱりぜんぜん足りない。

どれだけ声を聞いて、ふれて、ふれてもらっても。

もう、キスだけじゃ足りない。

ずっと会いたかった遥が今目の前にいて、ふれてくれてるのに。


「もう、我慢できない……遥がほしい、の」


『あんたなんか!あんたさえいなければ!』


ぎゅっと閉じた瞳の奥で、遥が愛おしいと言わんばかりに目を細めて、腕を広げて待ってくれている。


先行きの見えない不安、恐怖。

安心させて。

変わらず私は遥のものだって、教えて。


「っ!!」


瞬間。