もう、キスだけじゃ足んない。



熟れたトマトみたいな顔で震えながら、杏の口を塞ぐ桃華と、失言した!と同じくみるみるうちに真っ赤になる杏。


「杏……俺、おまえがそういう癖持ってるとは知らなかったわ」


唖然とする遥に、私は前に遥が言ってくれたことを思い出した。


『俺は、いじめて、泣かせて、縋らせて、最後にめちゃくちゃ甘やかすとか、そんなこと絶対にしたくないし、しない』

『だって俺でこんなとけて、かわいくなってる表情見せられたら、もっともっと気持ちよくしてあげたいって思うから』

『胡桃が喜ぶことして、とろとろになるまで甘やかすほうが好き』


そう、言ってたよね……。


クールで涼し気な遥と。

王子様みたいに穏やかで、優しそうな杏。

ふたりの見た目と雰囲気的に、逆なイメージはあるけど、まさか杏が……。


じゃあ、ふたりのアレのときも、杏、そういう感じだったんじゃ……?

だって桃華、雄みが強いとか新しい扉開きかけたとかそんなこと言って……。


「胡桃。お願いだから何も考えないで。
今のこと、ぜんぶ忘れて」

「あ、はい……」


矢継ぎ早に告げられて、うなずくしかできなくなる。

真っ赤な桃華と杏。

そしてあんぐり口を開けた遥。

と、とにかくこの空気を変えよう!うん!


「えっと、一旦CM入っちゃったしお茶入れ直そっか?」

「あ、じゃあ、俺新しいの入れてくるよ。なにがいい?」

「いいよ、遥!これくらい」


「桃華も。あああ、あったかい紅茶にしとく?」


「だだだだ、大丈夫!あたしも飲みたいのあるし、いっしょに冷蔵庫行こっか胡桃!!ねっ!?」


弾かれたように桃華に話しかけた杏だけど、ふたりとも無理してるのがバレバレ。


「ふたりとも、ちょっと待ってて」


冷蔵庫行こ!!この空気無理!!

桃華に目で必死に訴えられて、俺がって立ち上がろうとするふたりを制して、桃華と冷蔵庫へ。