もう、キスだけじゃ足んない。



「それだれ?綾瀬さんが連絡する男、俺だけじゃだめなの?」

「綾瀬さんに頭なでられるの、めっちゃ好き。
もっとして……」


綾瀬さん、綾瀬さん。

杏……委員長の甘えん坊がとまらない。


「ほんとに無理……はずかしくて死ねる……もう消そうよ……」

「えー!?これからがおもしろいところなのに!」

「なら俺、ちょっと向こうに……」

「あたしはかわいいと思うよ?」


「え?」

「だって、自分だけに素顔見せてくれるのって特別感あって最高に良くない?」

あたしなら、進んで甘やかしてあげるけど、なんて。

「も、桃華……っ!」


「胡桃は?」

「へ?」

「どう思う?こんなベッタベタに甘えてくる男」

ベッタベタ……。

桃華に話を投げかけられて、綾瀬さんの肩にこてんと頭を乗せる委員長の姿が映る。


んー、どうだろう……。

もし自分が綾瀬さんの立場だったら、かわいいって思うのかな。


「胡桃。ああいう男いいなって思うの?」

「へ?」

「やだ」

「は?……っ」


唐突に言われた言葉にぐりんっと後ろへ振り返ったけれど、あまりの顔の近さに言葉に詰まってしまう。

「胡桃に甘えられるの、俺だけでいいじゃん」


「えっ!?」


「こんなこと言う俺は、かわいくない?」

「えっ、えっ!?」


目尻を下げて、子犬みたいにしょぼんとしたまなざし。

「頭なでなでして。胡桃によしよししてほしい」

「うぐっ、」


か、かわいい……っ。

首に顔を擦りつけてくるその仕草に胸がきゅううんとなる。

なになに!?もしかして遥、甘えん坊やってる!?

ふだん私ばかりが甘やかされてるから、遥のこういう姿は貴重すぎて。


「やっぱ無理だな」

「えっ?」


けれどそれはほんの一瞬。


「ひゃっ……!」


ちゅうっと首筋に吸いつかれて、ビクンと体が跳ねる。

「甘えるより甘やかしたいわ、俺。
尽くされるより尽くしたい。甘やかされるのなんて、ほんのたまーに、1年に1回くらいでいいわ」


な?

クスッと微笑む瞳にのぞき込まれて、ドキンと心臓が音をたてる。


「俺も。俺もだから!胡桃!遥!」

「え?」

「なに?」


「俺ふだんはこんなんじゃないから!」

「うん、分かってるよ……?」


演技、だし。

遥に続くように、杏も声をあげる。

杏こそ、甘えん坊ってイメージから両極端なところにいる気がする。

さっきの遥みたいに、尽くしてあげたい、みたいな。


「んー、でも。意外と桃華とふたりだったら甘えてたりして」


神妙な遥の声に、杏の声はますますヒートアップ。


「違うって!俺は甘えるどころか、いじめせて、縋らせて、最後にめいっぱい甘やかしたい……」

「杏!!そこまで……っ!」

「え」

「ふたり、固まってるから!」

「あっ……」

「……」

「……」