それからドラマが始まっても。
「ん、耳まで真っ赤」
「そこで話すのやめて……!」
ぜんぜん集中できない!
ちょっとでも離れようとすれば腕に力が込められるし、耳とかうなじに、吐息がかかってくすぐったくて。
ただでさえ遥、声がめちゃくちゃイイから、頭に直に響いて……。
「前も、俺の声好きって言ってくれてたもんな。
……胡桃」
「っ!!」
「あ、ビクッてした。かわいい、好き」
吐息ごと吹き込むように囁かれて、体が跳ねるのを我慢できない。
「ね、待って……」
「ほーら、逃げちゃだめ。もっと俺とくっつこ?」
「っ……」
「もっとはずかしいことしてんのに、ぎゅーするだけで赤くなる初々しいとこも、ほんと好き。超好き」
甘えた声。
グリグリ肩に顔を押しつけられて、もう逃げるとか考えられない。
「うっわ!遥たちのシーン、濃厚!
まじでぶっちゅーかましてるじゃん!」
桃華……もう慣れたの。
途中回想のシーンが入って、遥と私のキスシーンが入る。
私は自分のキスシーンが映るよりも、今の状況のほうがよっぽどはずかしいよ。
「ねえ、綾瀬さん」
「あーーー、はっっっず。ほんと無理……」
何とか落ちついて見れば、杏……えっと、委員長が副委員長の綾瀬さん(桃華)の腕を掴んで引き止めている。
「うわぁ……結構激しいんだな、杏……」
「言わないで……」
ずっと好きだった綾瀬さんに一度キスしてしまったことで彼の中の何かが外れてしまったのか、嫌がる彼女に、何度も激しい口づけ。
「急にキスしちゃったのは、ごめん……でも、ずっと好きだった」
本人がいる中でのキスシーン鑑賞。
なかなかカオスだよね、これ。
「あああ、ここからのシーン、ほんとに見たくない……」
「うぐぅ……杏、苦しい!!」
さっきまでの余裕の笑みはどこへやら。
ううっ……と、桃華の肩に完全に顔を埋めてしまった杏。
どうやら、肉食委員長に押されて、ふたりは付き合い始めたらしい。
「……どこ行ったのかと思った」
「ごめん、喉が乾いたから自販機に行ってた」
「起きたらいなくて寂しかった」
「ごめんごめん」
「これからは手つないでくれないと、すぐに起きるから」
「なに?委員長はうさぎさんなの?」
「そうだよ。俺、綾瀬さんがいないと寂しくて死んじゃうんだよ」
「そ、そうなんだ……」
なんというか……。
「委員長だけど、ふたりのときのギャップがすごいね……」
「俺それがほんとに嫌だった……」
クラスの委員長としての威厳な態度は表の顔。
大好きな綾瀬さんとふたりのときは甘えたで、寂しがり屋な猫系男子。
そういやこのドラマのタイトル、「真面目な彼の秘密~」とかそんなんだった気がする……。



