もう、キスだけじゃ足んない。



「ねえ、本当に手伝わなくて大丈夫?」

「ん、大丈夫。胡桃は座ってて」


「杏も、仕事で疲れてるんじゃないの?」

「大丈夫だよ。ほらほら、桃華も座って。
楽しみに待ってて」


それから適当に買い物も済ませて、桃華と杏の部屋、に帰ってきた私たちは。


「杏、そこの鍋使っていい?」

「遥、冷蔵庫にある白だし、取ってもらっていい?」


今日は俺たちが作るからと強く言われて、桃華と私はソファーでゆっくり。


「私たち、本当になにもしなくていいのかな」

「座ってるだけってのも、変に落ちつかないよね」


うちは私が作るのが当たり前になってるし、というか私が好きで毎日やってるし。

桃華たちのところも、やっぱり忙しいのは杏のほうだし、桃華も料理するのは気分転換になるとかで、お互いいつも女子ーズがキッチンに立っているからソワソワしてしまう。


遥、エプロン似合うなぁ……前にパスタ作ってくれたときも思ったけど、男の人が料理してる姿って本当にかっこいい。


「杏、エプロンかっこいい……今度プレゼントしてあげようかな」


桃華も頬を赤く染めて、ぽーっとしてる。

ふふっ。


杏のことになると、一気に乙女になる桃華が本当にかわいい。


「んー、やっぱり座ってるだけなの落ちつかない。手伝い行く?」

「そうだね。ああは言ってるけど、やっぱり罪悪感が……」


けれど。

少しでもキッチンに近づこうもんなら、


「くーるーみー、ふたりの前でふっかいキスしていいの?」


「そ、それはだめ……!」


「もーもーかー?あとでたっぷり構ってあげるから今はいい子にしてて?」


「そういう意味じゃないんだけど!?」


なんて言われるから。


「一体全体どうしたの、あのふたり」

「なんだろうね……?」


戻ってきたソファーでふたり、顔を見合わせるしかできない。