「かわいい、胡桃。大好き」
『もう……っ、遥!』
はぁああ……ほんっとにかわいい。
「こら、暴れないの」
「っ……だって、」
ボンッと湯気でも出そうな胡桃をぎゅうっと抱きしめる。
あーあ。
胡桃、それ逆効果だよ。
本当にいやだったら、無理にでも抵抗するはず。
でもそれがないから。
「いやじゃないだろ?」
「っ、なっ……」
口では突っ返してくるのに、また俺を受け入れてくれるその姿に、にやけがとまらない。
ああ、俺意外と大丈夫かと思ってたけど、相当頭きてんな……。
胡桃がこの妖精みたいな服着て登場したときからずっと。
胡桃に邪な目線を送り続ける男のスタッフどものほうを見てふっと笑う。
ほら、存分に見とけよ。
こんなにころころ表情が変わるのも、
こんなにいろんな姿を見せてくれるのも、俺の前だけだってこと。
胡桃がいかに俺を信頼して、心を開いてくれてるか。
ふだんは大人しい性格の胡桃の、慌てたり、はずかしがる姿を見られるのはこの俺だけなんだって。
「っ!!」
目が合った瞬間。
胡桃へ送られていたいくつもの熱視線がバッとうつむく。
そうそう、俺の彼女にそんな下心しかない目線向けんなよ。
下向いとけ、下。
俺、性格わっる。
「もう、遥、いいかげん離して……」
「だーめ。
まだがんばったごほうびあげてる最中だから」
「ごほうびって……そんなのあとでいいから……」
うん。
はずかしいって、胡桃の気持ちも尊重してあげたいけど、もうちょっとだけ、ゆるして。
胡桃のこと感じさせて。
「その衣装、めちゃくちゃかわいい。
超似合ってる」
「え」
「最初見たとき妖精かと思った」
「っ、なにいって……って、話ごまかさないでよ!」
バレたか。
ポカポカ俺の胸を叩こうとする小さな手が愛しくて、ぎゅっと握る。
「ごめんごめん。だって、いっしょにいるのに、胡桃にさわれないなんて、死ぬし、俺」
『ばかなの……!?』
そ、ばかだよ。
ほんとに死んじゃうんだよ、俺。
もう四六時中ずっと、胡桃のことしか考えてないから。



