「大丈夫だよ、胡桃ちゃん。
俺がちゃんとリードするから」
「は、はい……」
正直先輩の声が入ってこない。
一気にハードル上がるって……もうキスシーンくる!?
「次は本格的にベッドの上だね。
横になった日向くんの上に、胡桃ちゃんが跨る。
で、日向くんが胡桃ちゃんのカーディガンをゆっくり脱がせる」
!?
「監督……業界の子じゃないのに、めちゃくちゃハードなことやらせるんですね……」
彼氏、見てますけど。
「そう言って〜、実はめちゃくちゃ喜んでるでしょ?」
「わかります?」
デレデレする監督に、ため息をついていた先輩がふっと笑う。
「跨ってるところからスタートだから」
そう言って私を見る監督と、ベッドに腰かける先輩。
「胡桃ちゃん」
おいで。
「っ……」
コテンとかしげた首。
ゆるりと細められた目と、そっと差し出された手。
「おっけー、日向くん!
このまま行こう!」
こ、このまま!?
さっき跨るスタートだって!
スキップで席へと戻っていった監督を睨みつつ、とりあえず先輩の前に私も座ったはいいものの……。
どうやら先輩がゆっくり倒れるタイミングで私が跨るって感じみたい……。
「じゃあ、撮影はじめまーす!」
「遠慮しないで、体、倒してきていいからね」
「はい……」
「本番5秒前、4、3、2……」
「────胡桃」
えっ……!?
今、名前……。
そう思った瞬間。
「っ!!」



