『杏の場合は元々桃華が好きだからってのが一番の理由。俺も、胡桃を不安にさせたくないって言うのはあるけど……』
『うん……』
『そもそも胡桃以外の女、全員が無理だから』
『え?』
『心底興味ないし、どうでもいい。
言い方悪いけど、そもそも女と思ってないし』
『えっ!?』
『いくら撮影でも、ほんの一瞬でも胡桃以外の女にふれるとか、ふれられるとか、死んでも無理。吐き気がする』
『それ、は……』
『何回も言ってるけど、俺にとっての女の子はずっと胡桃だけ。胡桃だからふれたいし、ふれてほしい』
胡桃のことが、好きだから。
『っ……』
そう言って甘く優しく、愛おしいと言わんばかりに笑って。
『けどたまには胡桃からもふれてほしいな』
『え?』
『またポリス服……今度はちがうコスプレ着てもらおうかな』
『ばか……』
私だって、遥が他の女の子にふれるのはいやだし、他の女の子がさわるのを見ているのはいや。
私だけがいい。
遥にふれるのも、ふれられるのも、この世界で私だけがいい、なんて。
けど今は……。
「胡桃ちゃん?聞いてる?」
「っ!!聞いてます……っ!」
「日向くんがかっこよすぎるからってそんなに緊張しなくていいからね。リラックスリラックス!」
「……」
ちがうんだけどな……。
にっこり笑いかけてくれる監督さんに、思わず苦笑い。
遥の中での女の子が私だけなように。
私の中での男の子も、ずっと遥だけなの。
だから……。
「じゃあ、軽くリハして本番行こうか」
「はい」
「はい……」
この撮影だけは、なんとしてでも乗り越えなくちゃいけない。



