胡桃と俺との間を遮るように。
俺に背を向けて胡桃の前に立った日向さんは。
「ほんとにかわいい……だれにも見せたくないくらい、かわいいよ」
するりと胡桃の髪をとって、ゆっくりそこに口づける。
「っ!!」
「きゃあああ!」
女性スタッフから悲鳴と、バタッと何かが倒れる音がした。
「あの子がウワサの……」
「この間Mateでめちゃくちゃ話題になってた子だろ?」
「あの見た目で一般人はやべーだろ。
俺、連絡先……っ!!」
───見んな。
「嫉妬がとまらないわねー、遥くん」
「抑えろ遥!
あとがめんどうだから!」
「知らね」
男スタッフの顔を一つ一つ睨みつける。
彼女が他の男どもにかわいいかわいい言われてうれしいやつがあるかよ。
ここにいる男の記憶、ぜんぶ消したい。
「うわぁ、まだ撮影前なのに、甘い雰囲気いいね、ふたりとも!そのままで行こう!」
「やっと来た……」
ボソッと横で河内さんが嫌味をはいた。
俺もそう思う。
「じゃあ、撮影はじめるよー!
みんな気合い入れていきましょう!」
よろしくお願いします!
監督の一声に、スタッフが四方八方に散らばっていく。
「俺たちも移動しようか、胡桃ちゃん」
「は、はい……」
胡桃の背にそっと手を回して促す日向さん。
ッチ、さわってんじゃねーよ、セクハラだろ。
胡桃、困ってるだろうが。
『遥』
ふたりが横をすれ違う瞬間。
聞こえた胡桃の声にうなずけば、胡桃もゆっくりうなずき返してくれた。
『見てて』



