もう、キスだけじゃ足んない。



「けどちょっーと意外だったかも!」


「あ、河内さん」

「……どうも」


「この間ぶりね、遥くん。
胡桃ちゃんとはどう?あれから順調?」


「おかげさまで」


清見と話しているところににこやかに話しかけてきたのは、前の杏たちのドラマに出たとき、胡桃にメイクしてた河内さん。

今回監督だけじゃなくて、メイクまで同じ人なのか……。


「胡桃ちゃんならもうすぐ来ると思うわ!
ふふふっ」


俺を見て、にんまりする河内さん。


どうせ、めちゃくちゃかわいいって言いたいんだろうけど。


見なくたって、言われなくたってわかる。

胡桃が、めちゃくちゃかわいいことくらい。


だって、どんな格好でも似合うから。

制服も、ジャージも、私服も、文化祭で着てたドレスも、エプロンも。

メイクだって、髪もセットしていればもちろん、宇宙一かわいい。


けどそうじゃなくても。


ふだん学校行くときみたいに、メイクもなにもしてない自然な胡桃が、俺は一番好き。


「で、なにがちょっーと意外だったんですか、河内さん」


「それあたしのマネ?
ぜんぜん似てないわ、プッ」


「河内さんて、ぜったい俺のこと嫌いですよね?」


さあ?

小馬鹿にしたようにクスクス笑う河内さんに、俺も軽く噴き出しそうになる。


「だって、胡桃ちゃんのこと、めちゃくちゃ溺愛している遥くんよ?意地でも断りそうじゃない」


「そうですか?」


「うん。
いくらMVとはいえ、泣いてわめいてでも他の男とそんなこと許さない!とかなんとか言って、あのエロオヤジ業界から追放するくらいまでやりそうなのに」


「監督のこと言ってます?」


「それ以外ないでしょ?」


なに、あなたこと言ってると思ったの?

相変わらず清見には煽りまくりな河内さん。


「で、どうなのそこんとこ!
それくらいまでしなかったの?」


一瞬殺そうとまで考えたし、追放くらい、しようと思えばできたと思う。


でも……。


「日向さん、入ります!!」


「今日はよろしくお願いします」