もう、キスだけじゃ足んない。



「これもさ、ネクタイの意味なくない?
ここ、丸見えじゃん」


「っ、ぅ……ふっ、」


とろりととけた低くて甘い声に耳が震える。


「太ももも、どんだけ出してんの」


「っ……やぁ、」


ゆっくり太ももをなぞる熱い手にじわりと視界が歪んで。


「っ……」


ぎゅっと目をつむって顔を背けてたら、するりと頬をなでられた。


「胡桃」

「っ……」

「言い訳、あるなら聞くけど」

「……」


ゆっくりゆっくり目を開ければ。

ん?と顔をかたむけてほほ笑む遥。


言い訳なんかない……。

だって、見たまんまだから。


「Mate」

「え?」


「Mateって、コスプレ雑誌の撮影だったんだろ、今日」


「な、なんで知って……」


ぼーっとしていた頭が一気にクリアになる。

清見さんから、聞いたの?


「聞いてない。昨日聞いたときから、なんとなくそうかなって思ってた」


「う、うそ……」


「ほんと。だって、いくら清見に聞いても雑誌名教えてくんないし、写真も見せてくんないし。もしふつうの女性誌だったら、言うだろ、どの雑誌くらいかは」


「それ、は……っ」


「それに、たまに一般人使ってることあるしな、あの雑誌」


じっと私を見下ろしてくる遥。

その、瞳は……。


「はる、か……」


「うん?」


「怒って、る……?」


ふっと細められた瞳。

今までで、一番わからない。

遥がなにを考えているのか。


「怒ってるっていうか……はぁ、」


にこやかに笑っていたその目がきゅうっと細められて。


「怒ってないよ。
もう断れなかっただろうし、Mateの撮影だって、行ってからわかったことなんだろ?」


潤む私の目尻にそっとキスを落として、優しく頭をなでてくれた。


まるで見てきたように話す遥。


ま、こんなことだろうと思ってたけどさ、なんて深くため息をつく。


「俺が言いたいのは……」


「ん……っ」


ふわりと前髪をかきあげられて、羽みたいに落ちてきた唇。


「胡桃のかわいさが、世に知られちゃうってこと」