もう、キスだけじゃ足んない。



え、私なにか変なこと言った……?


「へえ、そうなんだ」


ん?

なにか納得したように何度もうなずいたイケメンさんは、ふっと笑うと私をじっと見つめてきた。


「俺のこと、知ってる?」


「えっ!?
ああ、いや、その……」


「知らないんだ?」


「すみません……」


やっぱり有名だよね、こんなイケメンさんだったら!

ああああ!時代遅れでほんとにごめんなさい……!


「ふふっ、ぜんぜんいいよ。
気にしないで」


「本当にすみません……テレビとか、あんまり見なくて……」


「そうなんだ。
いいね。キミみたいな女の子、生まれてはじめて」


「え……?」


「まあ、そんなそぶりなかったし、女の子特有のやつもなかったから、そうかなーとは思ってたけど」


目をゆるりと細めて、クスクス笑うイケメンさん。


そんなそぶり?女の子特有?


あ、もしかして……。

私がこの人のファンだから助けてくれたとか、声かけてくれたって思ったのかな……。

芸能人ってだけで、とにかく声かける人もいるだろうし。

今どきあんまりテレビ見ない女子……たしかに珍しいか……。


「あのさ」

「はい……?」


「もしよかったら、なんだけど……連絡、」


「胡桃ー!」

「あっ、すいません!
呼ばれてるので行かないと……」


すぐ近くで聞こえた桃華の声。

やばい……!

早く戻らなくちゃ!


「じゃあお大事にしてください……!
私、行きますので……」


「待って!」


「っ!?」


立ち上がった私の腕を掴むと、なにを考えているのか、じっと真剣な目で見つめられた。


「さっきのことは、俺たちだけの、秘密ね?」


「わ、わかりました……」


「それと、」


「はい……?」


「君の名前、教えて」


「橘、胡桃です……」