もう、キスだけじゃ足んない。



「はぁ……、」

「え?」


ふと近くで聞こえた男の人らしき声に、ふっと顔をあげる。


「……」


なに、今の?気のせい?

でもたしかに聞こえた……。


「……」


周りを見渡すけれどだれもいない。

ただ、シーンとした長い廊下にたくさんのドアが並んでいるだけ。


っ、こわい……早く戻って……。

そう思った瞬間だった。


「はぁ……はぁ、」


っ!?


すぐ近くのドアから聞こえた声。


やっぱり今の……!


そう思って、キョロキョロ周りを見渡せば。

少し開いたドアのすき間から。


「はぁ、はぁっ……」


人が……!

ドアに寄りかかって座ったまま、息苦しそうにしているのが見えた。


どうしようどうしよう!?

人呼んできたほうがいいよね!?


「っ、はぁ、ぐる、し……っ、」

「……」


えーい!もうこうなったら……!

勝手に入ってごめんなさい!


そう思って体を滑り込ませて中に入れば。


「だ、大丈夫ですか……!?」