もう、キスだけじゃ足んない。

***


「はーい!
みんなおつかれさまー!
ちょっと休憩しよっか!」


「桃華、あーちゃん、私ちょっとお手洗い行ってくるね」


「りょーかい!」

「おっけー!」


ふたりに声をかけて、そっとスタジオを出る。


はぁ……疲れた……。


着替えて、撮影して、着替えて、撮影して、の繰り返し。

緊張はもうないけど、モデルさんて、こんな大変なんだ……。


なんか桃華の大変さがめちゃくちゃわかった気がする……。


ブーッブーッ……。

ん……?


【撮影順調そう?
大丈夫か?】


あっ、遥……!

手に持っていたスマホが軽く震えて、見れば遥からのメッセージ。

お仕事で疲れてるはずなのに、心配してくれるその優しさに胸があったかくなる。


【大丈夫だよ。
お仕事大変なのにメッセージありがとう】


【どういたしまして。
清見に胡桃の写真送れって言ってんのになんの連絡もよこさないから心配してたんだよ。大丈夫そうなら、よかった】


……そりゃあ清見さん、送れないよ。

だってコスプレ雑誌の撮影なんて言ってないもん!


【胡桃?どうかした?】

【ううん、なんでもないよ】


【そう?ならいいけど……今、休憩中?】

【うん】

【俺も。けどすぐに戻んなきゃなんない】


その言葉にぎゅっと胸が締めつけられる。

電話は、できそうにないか……。


はぁ……。


【会いたい】

【会いたいな……】


【え】

【えっ!】


送った瞬間、同時に遥からも同じメッセージがきて思わず笑ってしまった。


【胡桃も同じこと思ってくれてて、めちゃくちゃうれしい。にやけとまんない】


私もだよ。

会いたい。会いたいよ……。


でもこれ以上言っちゃったら、遥は気を使うだろうから。