もう、キスだけじゃ足んない。



そして話は冒頭に戻る。

「で?これって、コスプレ雑誌の撮影よね?」


「そうです……」


「なんで言ってくれなかったの?」


「それは……」


「あー、もういいや。
どうせ、遥が怖いから、でしょ」


「何も言えない……」


ギロっと清見さんを睨む桃華。

ほんと、今回だけは清見さんを庇いきれない……。


「胡桃。これ、大丈夫なやつ?」

「正直、バレたら終わりな気がする……」


遥はたぶん女性誌とかティーン雑誌の撮影だと思ったと思う。

けどコスプレ……前もって言っていたら絶対却下したはず。


だってコスプレって、ふつうの服と違って結構際どいのとか多いイメージ。


ナース服からメイドさん、バニーガール、なぜか赤ずきん?みたいなのまであるんだけど、


「露出度高すぎない……?」


メイドさんなのに、胸元はガバっと開いてるし、スカートは見えるか見えないかのぎりぎり。

レースがふんだんに使われているとはいえ、なぜかビキニみたいに分かれてるやつもある。


これ、コスプレ?

下着の撮影のまちがいじゃない?


メイドさんて、ふつうお腹出さないよね?


「ねえ、桃華……」

「あたし帰る」


「えっ!?」

「待て待て待て桃華!」


隣にいた桃華を見た瞬間。

死んだ魚のような目をした桃華が足早にスタジオを出ようとする。


「千歳っちなら、あたしがコスプレ雑誌嫌ってる理由分かるよね?」


「それはわかるけど……」


「なら話は早いね。
あたし、帰らせてもらうから」


ふんっと清見さんをにらみつける桃華に、慌てて彼はスマホを見せる。


「来週の日曜、杏のスケジュール、オフにするから!」


「は?」


ぐりんとこっちに振り返った桃華。

ど、瞳孔開いてるし、声低すぎ……。