もう、キスだけじゃ足んない。



ずっと好きだった。恋焦がれてた。

手に入れたかった。


胡桃たちが苦しんでるときも。

桃華に振られたときも。


ずっとずっと、桃華がほしくてたまらなかった。


「もっ……杏、」

「うん」


息を荒らげて、目にいっぱい涙をためて。


ぎゅっと俺の服を握って、見上げてくる桃華にずくりと体が熱くなる。


だめだ。

だめだ、だめだ、だめだ。


まだ付き合ったばっかだよ。

さっきまでまだふつうの幼なじみだったんだよ。


「杏……?」

「大丈夫。なんでもないよ」


ふっと目を閉じて込み上げてくる熱を抑えて。


そっと俺の背中に手を回してくれた華奢な背中をゆっくりなでる。


「桃華……」

「ん……?」


「好きだよ」

「あたしも、好き……」


「大好きだよ」

「あたしも大好きだよ」


「愛してる」

「あたしも、愛して……っ、!?」


「ふっ、かわいい、桃華」


口をパクパクさせて俺を見上げてくる桃華がかわいすぎて、額に、濡れたまぶたに、そっとキスを落とす。


そんな顔、俺だけにしか見せてほしくない。


まぶしい笑顔も、顔を真っ赤にして照れた表情も、ぜんぶぜんぶ、俺だけのもの。


“ 桃華がほしい ”

“桃華を独占したい”


何年も抱えてきた想いはもう自分でもとめられないくらい、大きくなって。

理性とか、芸能人だからとか、もうそんなのぜんぶどうでもいいって思ってしまうくらい、深くて、暗くて、重い。


遥も大概だけど、俺もきっとそうだ。