もう、キスだけじゃ足んない。



そっと重ねた唇。


これ以上桃華からそんなつらい言葉は聞きたくなくて、思わず塞いでしまった。


「傷つけたとか、そんなこと、気にしなくていいのに」


「え……?」


「俺は、過去もぜんぶひっくるめて桃華が好き。
桃華が俺を好きでいてくれただけでもう心臓壊れそうなくらい喜んでるし、その分これから隣にいてくれたらこれ以上に幸せなことなんてないから……」


だからもう、そんな顔しないで。

いつもみたいに、笑って。



「っ、杏……っ」


するりと頬をなでれば、またぽろりと涙がつたって。

その涙を掬いとるように口づけて、腕の中に閉じこめる。

「杏……」


「うん……?」


「あたし、杏が好き。
ずっとずっと、好きだった……っ」


「桃華……っ」


震えて掠れた声だったけど、ちゃんと聞こえた。

やっと言ってくれた。

やっと気持ちが通じた。


「桃華……っ」

「っ、んっ、杏……っ」


抱きしめた腕の中、俺の名前をよんで、必死に応えてくれようとする桃華が愛おしくてたまらない。

桃華、桃華、桃華……っ。


好き、好きだよ。

ずっと好きだった。


「杏、くる、し……っ、」

「ごめん、でも、桃華に好きって言ってもらえたこと、実感したい、」


もう限界。

そう言わんばかりに腰を引こうとする桃華の背中に手を回して、グッと引き寄せて。


「ふっ、ぁ……杏……っ」


その感触をたしかめるように。

何度も何度も角度を変えて、深く、深く、唇を重ねる。