もう、キスだけじゃ足んない。



なんで泣いてるのかはわかんないけど、どうやら興奮して涙出たらしい。

ぽろぽろ涙こぼして、ぐすぐす言ってる。


いつも笑ってる。

いつも頼もしい私のお姉ちゃん。


でもそんな桃華がいつものバッチリメイクもとれてぐちゃぐちゃな顔で、

どこか不安げな目をしているのが、いつかの自分の姿と重なって。


「桃華」


桃華も1人の恋する女の子だったんだって。

モデルさんだけど、私と同じところもあるんだって、うれしくて。

杏のことになると、こんなにかわいくなっちゃうんだって。


小さな頭をポンポンなでる。


「うれしいよ」

「え?」

「桃華と、お互いの好きな人のこと、話すことできて」


お互い両想いなんだよって、周りが言うのは簡単。


でもそれじゃ、本人たちのためにならないし、なにより自分の気持ちはちゃんと自分でも伝えることが大切だから。


「杏とのこと、応援してる。
いつでも話、聞くから」


「ぐーるーみー!」


「ほらほら、涙ふいて!
杏に心配かけるよ!」


「胡桃も泣いてるじゃん!」


「これはほら……も、もらい泣きだよ、ばか……」


「ううっ、じゃあふたりで泣こう……」

「なんでよ!」


お互いいつの間にか、目から鼻まで真っ赤になってる。


「桃華がそんな顔してたら、私杏に殺されちゃう。遥のこと待っててあげたいから、がんばって泣いたの隠して、女優さん」


「ここで芝居の話持ってくるのずるいよ、胡桃!
まあでも、胡桃泣かせたってわかったら、遥もだまってないかも……」


「ふふっ、」

「ぶはっ!」


こんな顔でなんて物騒なこと話してるんだろう私たち。

お互い顔を見合わせて噴き出した。


「ありがとうね、胡桃。
あたし、がんばって杏に気持ち伝える」


「うん、応援してる。
ふたりでの生活、緊張すると思うけど、リラックスでね」


「胡桃もまあ……ケダモノには気をつけなね」


「ケダモノ!?」


杏とのこと、私と同じく、お互いにお互いをコンプレックスだと思ってたこと。


知らなかった。桃華がそんなこと思ってただなんて。

双子で姉妹だけど、まだまだ知らないことがたくさんあるのかもしれないね、桃華。


つらかったこと、苦しかったこと、ぜんぶぜんぶ、話してくれてありがとう、桃華。


私も桃華のこと、大好きで大切な自慢のお姉ちゃんだよ。