もう、キスだけじゃ足んない。



『桃華のこと、ずっと好きだった。
俺とつきあってほしい』


そう、言われた。


「でも、断ったの……?」

「うん。断った」


だってあたしじゃ、杏に釣り合わないから。


「えっ!?」


桃華と杏が釣り合わないって……えっ!?


ますます目を見開く胡桃。

そこ、驚くか……胡桃だったら、驚くのかな。


「でも桃華、モデルさんとしてめちゃくちゃ活動してるし、最近はドラマだって……それになにより、昔から人気者だったじゃん……」


胡桃には、そう見えたかもしれない。

だって胡桃とあたしは、性格が真逆だから。


でも、だからこそ……。


「胡桃が、うらやましかった」

「えっ!?」


胡桃、さっきから驚いてばっかだなぁ……そりゃあ、そっか。


胡桃があたしにコンプレックス持ってたように、あたしもコンプレックス持ってた、なんて、昔の胡桃に言っても、きっと信じてもらえないと思ってたから。