「莉子はどうなんだ?」


打ち合わせにない話に驚いている莉子も


お父さんの問いかけに


「私もっ、凛さんと結婚しますっ」


大慌てで返事をしてくれた


・・・ヨシッ!成功!


「何も出来ない不器用な娘ですが
末永くよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


企んだ俺と違って
真摯に向き合ってくれるお父さんは

初対面の俺を信じてくれた


そんなお父さんに報いるためにも
莉子を幸せにすると胸に誓って莉子を見ると


少し冷静になったのか


鋭い視線を俺に向けていた


・・・ヤバ


プロポーズもしていなかったのに
そりゃ、怒る、か


今夜は美味しいものを食べさせて
ご機嫌取らなきゃ


そんなことを考えながらも
中井家でのひと時は穏やかで楽しくて


結局


「泊まっていきなさい」


誘われるまま根を下ろすことになった


そこからはお母さんの独壇場で


山のような質問攻めに遭うことになった


「ところで凛さんって兄弟は?」


「姉が三人います
上から、杏《あん》、音《のん》、蘭《らん》と
四人全員が一文字名前で『ん』で終わります」


「何か意図があるの?」


「父から、響きが良いからって聞いたことはありますが
深い意味まではわからない、かな」


「モォ、お母さん質問し過ぎ」


「だって〜、こんなイケメンと話す機会
人生でそんなにないんだからねっ」


莉子の助けも虚しく

質問攻めはお兄さんへと移り


デッサンをするらしいお兄さんと

風景画の下絵のために何処へ行くかで盛り上がった


最後はお父さんと投資話に花を咲かせて


夜はお父さんとお兄さんと三人
客間で川の字に寝た