【NEXTOP 山下】



「もしもし」

(昨日の子だが・・・)


そう始まった山下さんの電話は
莉子が選んだ物件の話だった


・・・ハァ

莉子の内見した物件のオーナーは俺
だから申請を受理する訳にはいかない


[今ね、NEXTOPの山下社長と話した]

一方通行のようなメッセージを送る


色黒は北海道の僻地へ飛ばされるのに
莉子が此処を急いで出て行く理由は・・・

莉子のこれまでを考えれば
彼氏に義理立てする一途なところが浮かんできた


[急いで此処を出て行く理由ができたのね]


どんなダメな男でも
それが良いという女がいる


行き着いた答えと
既読にならないメッセージが

俺の心を揺さぶった


そして・・・


門扉のセキュリティ解除の知らせに
玄関まで降りれば


飲んで帰ったのか
ほんのり頬の染まった莉子が顔を出した



「・・・・・・っ、た、だいま」


「おかえり」


「凛、さん、仕事は?」


「休んだわ」


どこか気不味そうな顔をして
扉を開いたまま立ち尽くす莉子に胸が騒つく


「とりあえず入ったら?」


「・・・うん」


「ついてきて」


重い空気のままリビングのソファに向かい合って座る
  

「どこに行ってたの?」


「・・・真澄とご飯に」


少し視線を落としたままの莉子は
俺の顔を見ることなく答えた


「それ本当?」


思ったより低い声が出た俺に
やっと視線を合わせた莉子が返事をしないから


「本当に真澄なの?」


責めるような口調になってしまった


「・・・・・・なんで?」


「店前で色黒を見かけたって聞いたの」


「・・・え」


「山下さんの店に行ったんでしょ?
アタシに内緒で動くくらいだもの
此処を出てよりを戻すってことじゃないの?」


莉子が決めたことならと考えたらけれど
あんなに泣いた莉子を思い出すだけで、どうにも納得いかなかった