「ほら」


放心してソファに座り込んだ莉子に両手を広げて見せれば

迷いなく腕の中に飛び込んできた

肩を震わせて泣く莉子に胸が痛む



・・・アイツ許さない




「馬鹿ねぇ、あんな色黒の為に泣くんじゃないわよっ」


今はきっとこっちの方が莉子には良いはずと

声をかけながら背中をなでる

最後は昨日と同じように服を涙でベタベタにしたから



「アンタ、またブスになるわよ?」


泣き止んで欲しくて茶化してみる


「・・・っ」


息を飲んで俺を見上げる莉子は
更に眉を下げると


「片付けたら帰るね」


テーブルの上にあるままの
朝食の名残りに視線を移した


・・・は?


「な〜に言ってんのよっ」


「ん?」


「アンタ、今日はやる事沢山あるのよ?」


「・・・へ?」


「携帯電話の番号変更に部屋の確認
それが無事でも、一週間ほどは
アタシがアンタを預かるから」


「・・・?」


「色黒が言ったこと忘れたの?」


「いや、覚えてる?」


「い〜や、アンタ何にも分かっちゃいないわ」


「・・・?」


「男は案外女々しいもんなんだから
簡単に手放したりしないものよ?
それをさせないためにも徹底的に繋がりを切らなきゃ」


「・・・切る?」


「そうよ。どうせ分からないだろうから
今はアタシに従ってなさいよ」


「・・・それは」


「なによ」


「凛さんのこれまでの経験上なの?」


「フフ、アンタにはない修羅場は
熟してると思うわよ?」


「・・・凄っ」


「てか、初めての彼氏だったの?」


「うん」


「じゃ〜、アタシに任せて正解よ」


考える暇を与えないほど早口で捲し立てると


「よろしくお願いしま〜す」


漸く莉子が笑った