「終わった?」
「うん」
長い脚を組んでソファに座っている姿は
気取っていないのに様になっていて悔しい
ここで“悔しい”と思う私が変なのか
はたまた眉目秀麗な凛さんへの妬み嫉みか
「う○こ踏めば良いのに」
口から出たのは明らかなる悪口で
「アンタ!お昼ご飯抜きよっ!」
片眉を上げて怒る地獄耳の凛さんに
素直に謝る、なんてしない
「被害妄想andカルシウム不足じゃない?」
ケラケラと笑ってみせた
キーーっと歯を食いしばる様子は
見ているだけで楽しい
「・・・凛さん、好きかも」
ポツリと溢れた声にハッとして
口を押さえてみたけれど
「へぇ」
凛さんにはバッチリ聞こえてしまったらしい
「えっと」ここは何て言い訳するのが良いと思う?
告白でもないのに狼狽える私は
凛さんからすれば滑稽に違いないのに
「“好き”とか薄っぺらい言葉を使ってるようじゃ
お子ちゃまからは卒業出来ないんだからねっ!
どうせなら今朝のベーコンより好きになりなさいよ?分かった?」
「フフ、分かった」
それも全部含めて拾ってくれる器の大きさに
やっぱり気持ちは膨らんでいく
ギリギリセーフ?
あれはノーカウント?
どうせ失恋確定だとしても
告白するなら一世一代じゃないとね
いや・・・失恋って・・・ゔぅ
もう、誤魔化せない気持ちに
変な決意を固めたところで
すごいことを思い出した
「凛さん、引っ越しまではベッドがないから
お布団を買いに行かなきゃ」
あの部屋はカーテン以外何も無かったから
流石に布団だけでも買う必要がある
「アタシのベッド広いから一緒に寝れば良いじゃん」
「・・・えっと」
“気づいたら朝だったの”という今朝と違って
一緒に寝るとか、早死にするレベルなんですけどっ
口には出せない言い訳は全部飲み込んだ
「それに、引っ越しする時には
あのベッドだけは捨てなさいよ」
「・・・、そ、うだ、よね」
あのベッドに寝たら嫌でも洸哉のことを思い出すだろう
一瞬で奈落に落ちそうになる気分は
いつの間に近付いていたのか
「馬鹿ね」
優しい凛さんの声が掬い上げてくれた