「まぁよかったんじゃない、別れて。あいつ、いい噂なかったし」

「は?」

「あ、いや……。なんでもない」


今さら口ごもっても遅い。

何が言いたいのかわかってる。


「他に彼女がいたことでしょ、知ってるよ。……でも好きなんだから仕方ないじゃん」


彼氏に他校の彼女がいること……それどころか、他に何人もの女子に手を出していたことも知っていた。

私には一度も手を出さなかったのに……。


有咲(ありさ)、猫好きだったろ」

「……?」

「あげる。……俺のじゃねぇけど」


瞬は猫を抱きかかえると、それを私に渡してきた。


「ちょっとは癒されるだろ」


あどけない笑顔を見せながら……。


受け取った猫は温かくて柔らかくて。

本当はちょっとだけ癒やされてしまったけど、

“うん”とは答えない。


何もなかったみたいに優しくしてくる、瞬のそういうところが私は嫌い。