あの日の夢をつかまえて


「……あぁ、ちょっと違うなぁ。実果ちゃん、もう少し考えてみよう」



山方先生は実果ちゃんと机に向かって、プリントの問題を一緒に解き始めた。



「先生、僕もわかりません」



創路くんと同じくらいの、眼鏡をかけた男の子が振り返りつつ片手を上げる。

山方先生は、
「ちょっと待ってな」
と男の子を見てから、みぃくんをチラリと見た。



「せっかくだから、見てやってくれませんか?」



山方先生の言葉に、素早く反応したのはみぃくんではなく。



「えーっ!!憲行(のりゆき)くん、ずるいぞ!!」



創路くんだった。



「あとで創路も見てやってください」



山方先生がため息混じりに言うので、教室にクスクス笑う声が広がった。

みぃくんも笑顔になっている。



(あ……、こんな笑顔は久しぶりかも)



晴れた日の、木漏れ日のようなみぃくんの笑顔。

心の底から安心したような。

優しい表情。