あの日の夢をつかまえて


「本日はお忙しいところ、失礼致します。今日は、その……」



言葉が続かないみぃくんに山方さんは、
「ゆっくり見学していってください。そのあとのことはまた追々で構いませんので」
と、微笑んでくれた。



「え!?もしかして山方先生の後任って、澤田四段なの!?」



創路くんが勢いよくこちらに振り向いて言って、山方先生に睨まれている。



教室は学生時代に私が通っていた学習塾を思い出させた。

大きなホワイトボード。

いくつか置かれた長机とパイプ椅子。

白い壁に貼られた、みんなの目標。



今ここにいる生徒は、創路くんを含めて6人。

小学校低学年から中学生くらいの男女。

もしかしたら野口さんの娘さんも、今ここにいるのかもしれないな、と思った。




「山方先生ぇ、出来ましたー」



小学校低学年くらいの女の子がプリントを持って、そばに寄ってきた。



実果(みか)ちゃん、少し待ってな」



山方先生がみぃくんと私を交互に見て、
「少々騒がしい教室ですが、皆良い子ですよ」
と言って、実果ちゃんのプリントを受け取った。