あの日の夢をつかまえて


創路(そうじ)!ちゃんと挨拶をしなさい!」



部屋の奥から出てきたのは、白髪頭の痩せたおじいさんだった。

創路と呼ばれた少年がおじいさんを振り返り、
「先生、どうしよう!?」
と、明らかにうろたえた声を出した。



「さ、さ、澤田光臣四段が……!!今、オレの目の前に!!」



上ずった声で叫んだかと思うと、
「夢か!?夢なのか!?目を開けたまま寝てるのか、オレは!?」
と、自分の頬をぎゅうっとつねっている。



「あ、あの、ほっぺたが大変なことになっているよ」



慌てたみぃくんがその手にそっと触れると、
「キャーーーっ!!本物の澤田四段だぁーーーっ!!」
と、大興奮の創路くん。



「うるさい、創路!!」



おじいさんが創路くんを注意して、
「課題に戻りなさい」
と、部屋に置かれたいくつかの長机を指差した。



おじいさんは私達に向き直ると、
「私はこの教室で将棋を教えている山方(やまかた)と申します。連絡をいただいた澤田さんと貴島さんですね?」
と、深々とお辞儀をしてくれた。