あの日の夢をつかまえて


「えー、だってみぃくんが可愛いから」



そう言って再び顔を近づけようとしたら、
「わかったから!ちゃんと教室見学に行きます!」
と、みぃくんが私から逃げた。



上着を着て靴を履くみぃくんに、
「逃げたー、ひど〜い」
なんて口を尖らせて文句を言うと、みぃくんはやっとふんわりとした笑顔を見せて、
「あはっ、何その表情」
と、小さくキスをしてくれた。






結局私まで真っ赤な顔をしながら、ふたりで最寄り駅まで歩く。



××駅まで電車で10分。

××将棋教室は駅前商店街の中の、おもちゃ屋さんのビルの2階フロアにあった。

扉には「××将棋教室」と書かれた小さなプレートがぶら下がっている。



みぃくんが静かに息を吐いて、扉をノックした。



「はぁーい」



扉を開けてくれたのは10歳くらいの少年だった。

みぃくんが、こんにちはと挨拶をする。

私も同じように挨拶をしたけれど、少年はじっとみぃくんを見つめて動かない。