「え? なんで、す、鈴城さんが……」
「うそっ」
書架の整理をしていたのは、なんと充さんだった。
先生は困惑する私と充さんとを交互に見比べると、にっこりと微笑んだ。
ちょっといたずらっ子のような顔で「すごい偶然だ。面白いことになった」と言う。
なんで早くいってくれなかったんだと、不満な視線を送ると、先生は言い訳のように首を振った。
「いやいや、僕も最初、驚いたんだよ? まあ、あそこの大学は教育学部もあるから、もしかしたら研修生としてやってくるかもなーと、考えなくもなかったけど。実際、僕もここに研修に来たからさ 」
「先生、僕のこと知ってたんですか?」
「うん、まあね。図書館で見かけることが何回かあったから。だって葉倉くん、よく友達ときてたでしょ?」
「ああ……まあ勉強しに行ってましたけど。それより、鈴城さんなにか先生に用があったんじゃ?」
その問いには、先生が笑う。
「ああ、いつもの事だから。用事ってことはないと思うけど」
「それは……そうだけど。失礼だね先生。いいじゃん遊びに来ても」
私はぷうっと頬をふくらませる。
「……鈴城さん先生と仲良いんですね」
充さんにとっては何気ない質問だったのだろうけれど、私にはドキリと心臓が跳ねる感想だった。
「え!? あぁ、そうなんです。えへへへ」
そう答え、少し視線をずらすと先生と目が合った。
「友達がいないとは言えないもんな」という結構失礼でニヤニヤした顔をこちらに向けていた。
充さんからは見えないよう先生に向かって、イーっと威嚇する。



