私もちょうど余り物になるだろうことを想像してうんざりしていたところだった。
打算でもなんでも一緒にしてくれるならありがたいと半ば投げやりになっていた。
「え、もしかして嫌だった?」
「ううん、違う。役に立てるかわかんないから」
「……ちょっと待って」と三坂さんは強く手のひらを押し出した。
「そんなの関係ないよ」
真剣な顔で三坂さんが言う。
そして少し言い淀み、こんなこと言葉にしないといけないなんて思ってもなかったよ、とポツポツと話し始めた。
「朝ね、単純に楽しかったの。
なんかね……あの時間、あまりにも居心地がよかったから、だからもっと柚香ちゃんのこと知りたいと思った。私が誘ったのはそういう理由。
タイミング的にたまたま現代文の授業がグループワークだったからってだけで、ただ私は柚香ちゃんと一緒にやりたいなあと思った。それだけだよ」
三坂さんの視線がゆっくりと廊下に落ちていく。つねに華のような彼女がこの時は不安げに眉を下げた。
「柚香ちゃんは、楽しくなかった?」
その声はいまにもそっぽを向いてしまいそうな、拗ねたような口調だった。
楽しくない、わけが無い。
私はにっこりと微笑んだ。
「ごめん……私、失礼なこと考えてた。もうこんなこと思わない。私だって本当に楽しかったから」
だから一緒にやってくれないかな? そう言うと、三坂さんの肩がピクっと反応した。
俯いた顔が上がり目が合う。そして、みるみるうちに表情は明るくなり、目を細くさせ満面の笑みを浮かべた。
「……やった! 」
三坂さんの温かく柔らかい手が私の手を包み込んで踊るように振られる。嬉しさが握られた手をつたって直接流れ込んでくるようだった。



