宿題は進んでいるんだろうか。
ポツポツとこぼれるような会話だったのが、三坂さんは身体をこちらに向けて、椅子の背もたれに肘をついている。
進んで無さそうだなあ、と思った時「あれ? 七海ちゃん早いね!おはようー」とクラスメートの別所さんが入ってきた。
ショートカットで、はきはき話すのが印象的な女の子。いつも三坂さんの隣にいるイメージ。
「そっちも早いじゃん! おはよー」
三坂さんが身体を別所さんの方に向け手を振る。
私と三坂さんが自然に話せる時間は、終わったのだなと視線を本に落とす。
「えーなに? 宿題やってんの?」
「うん忘れちゃってさー」
別所さんが三坂さんの手元を覗いているのだろうか、2人の声が同じところから聞こえた。
いつもなら気にならない、クラスメートの会話が今はすごく敏感に耳に入ってきた。
「見せてあげよっか? わたしやってるから」
「うーん。いいや、もうちょっとで終わりそうだし」
「まっじめー」
「ひそかに優等生めざしてるからねー」
私と話してる時より砕けた言葉使い。
それでも、宿題は見せてもらわないんだなあとぼんやり思う。
だんだんクラスメートが登校してくると、私と三坂さんは元の関係にもどった。
『元の関係』なんて大袈裟な物言いだなと、薄く笑えてくるけれど。コレはちょっと寂しいということの表れなんだろうな。



