「この人は、友達思いで、純粋で、清らかな人なんだなあと思ったよ。だから決してボスなんかじゃない、聖母だもん」
言いたいことは、単純にこれだけの事だったのに随分遠回りしてしまった。
「……あの、ごめん三坂さん。三坂さんはそんな風にみられてないってことを言いたかっただけなの。ごめんない、余計なことまで言っちゃったよね。……ごめん」
しゅんと私は首を下げた。
すると「鈴城さん、柚香ちゃん」
と思ったより明るい声が返ってきた。
「私、てっきりクールで美人な女のコだとばかり思ってたら、なんだ。不器用なだけなんじゃん! いーよいーよ、そんなの謝ることじゃないよー」
三坂さんは豪快に笑った。開け放った窓から風が吹き抜け空気を一新させる。三坂さんの前髪がハラハラとなびいた。
クラスでは見せない笑顔と、いつも完璧に描かれた眉が、今はちょんと気持ち程度しかないことに私は心が踊った。



