クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

片山君のリスペクト度が上がってるなぁ。
私もなんだか嬉しくなる。だけどちょっと寂しくなる。片山君や剣持さんが羨ましいのかも。
私も、もっと声に出して先輩の事好きって言えたらいいのに。

黙々と仕事をこなし、6時まで後10分。
片山君が、「あっ。先輩来ましたよ。」
嬉しそうに言う声で外を見ると、先輩がこっちを見て軽く手を振ってくれた。
それだけで嬉しくなって、思わず微笑む。
片山君はジャンプまでして両手をブンブン振ってる。

先輩は苦笑いしながらベンチに座ってこっちを伺っている。心配してくれてるのが分かる。

「小春ちゃん。そろそろ上がっていいよ。この持ってって、彼氏と食べてよ。」

いつの間にか来ていた店長がお弁当やらパンやらいろいろ入った袋をくれた。
「こんなにいいんですか?
ご迷惑お掛けしてるのは私の方なのに…申し訳ないです。」

「小春ちゃんが悪いんじゃないでしょ。ストーカーなんてする奴が悪いんだ。同じ男として情けないよ。なぁ。片山君」

話を振られて片山君もうんうんと頷く。

「そうっすよ。今度アイツが来たら俺がギャフンと言ってやります。任せて下さい。」

『ギャフン』って死語だよ。クスクス思わず笑ってしまった。

「小春、終わった?」
びっくりして振り向くと先輩がお店に入ってきた。このお店に入って来るのは初めてで、片山君も驚き顔だ。

「店長さんですか?今朝はお電話ありがとうございました。結城と申します。
小春の事でいろいろとお手数おかけして申し訳ないです。」

突然現れた背の高いイケメンに店長は固まって慄く。
「店長、こちらが俺が言った、小春さんの彼氏さんですよ。かっけーでしょ」
自慢げに片山君が言う。

「は、初めてまして。店長の芝です。この度はいろいろと大変でしたね。」
やたら丁寧な言葉使いになった店長に、私と片山君で思わず笑ってしまった。

「修哉さん。店長からお弁当とかパンとかいろいろ頂きました。一緒に食べましょ。ちょっと荷物取って来ますね。」

修哉は小春からビニール袋を預かって「ありがとうございます。また、折を見てご挨拶に伺いますので。」と和かに話す。

「お待たせしました」
とバックヤードから戻ると、いつの間に打ち解けたのか、店長と3人仲良く話していた。

「また、落ち着いたら改めてご挨拶に伺います。お仕事頑張って下さい。」
丁寧にお辞儀をして先輩とお店を後にした。