クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

「小春、せめてコンビニは少しの間お休み出来ないか?もし客として来たら逃げられないだろ?何かあってからでは遅いんだ。」

修哉の心配も分かる。

「あと、出してあるシフトが5日残っているんです。それまではせめて働きたい。時間帯を変更出来るか店長に相談してみます。」

「小春、それでも俺は心配だ。」
修哉が眉間に皺を寄せしばし考えている。

申し訳ない気持ちになる。
私、どこまで心配させるんだろう。

「小春の責任感の強さは分かってるつもりだ。でも、何かあったらと思うと…」

「とりあえず、これだけは了承して。
今日から、俺のうちに来る事。これは絶対だ。今から荷物まとめて。」

「はい。」
これ以上心配かける訳にはいかないと、修哉の言う通りにする事に決める。

1週間分の荷物をトランクに押し込み、大事な物はリュックに入れる。
後は、クマと観葉植物のガジュマロの木。
手早くまとめて、お弁当屋さんまで送ると言って聞かない修哉と共に、家を出た。

車の中で一息付く。
あっ。コンビニにでんわしなくちゃ。
「修哉さんちょっとコンビニに電話していいですか?今日のシフト早い時間に変えられるか聞いてみます。」

「後で代わって。」
えっ。店長と何話すの?
ちょっと躊躇しながら頷いた。

「もしもし、バイトの櫻井です。店長いますか?
実は本当に申し訳ないんですけど…」
家の事情で早い時間に調整して欲しいとだけ告げた。

いつの間にか車を道の脇に停めた修哉が代わってと手を出す。
「えっと、ちょっとお電話変わります。」
不安顔で修哉にスマホを渡す。

「お時間お借りして申し訳ないです。結城と申しまして、小春の身内みたい者です。

実は、最近ストーカー被害に遭っていまして、先日も本人がいない時にそちらのコンビニに来たらしいので、…」

修哉は事細かく事情を話し、心配した店長が今日から残りのシフトは3時から6時にして、残りの時間は店長がカバーしてくれる事になった。

電話を終えて、また車は走り出す。
「修哉さん。ありがとうございます。なんだかいろいろ巻き込んでしまって申し訳ないです。」
運転している横がを見ながら頭を下げた。
チラッと修哉はこっちを向いて、

「小春はいつまで俺に他人行儀なの?
俺の中では既に身内も同然だと思ってる。
もっと俺に頼って欲しいし、もっとわがままだって言っていいんだ。

…さっきは勝手に事情を店長に話して悪かった」
急いで首を横に振る。

「私がもっとしっかりしていれば修哉さんに心配かけなくて済んだのに…」


「小春が誰よりも大事なんだ。
どんなにしっかりしてようと心配は変わらない。
俺は小春が昔のように毎日が笑顔で過ごせるようにしたいだけなんだ。」