クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜



朝から今日はいい天気だ。
昨夜一緒に休む事にしたからか、ソワソワして早く目が覚めた。
遠足前の子供かっと、自分にいいたくなるくらいだ。

せっかくの休みだから、2人で何処かに出かけるかな。
ちょっと遠出するのもいいし、
小春の行きたい所に連れてってやろう。と思い立つ。

小春の様子を伺おうと、遠慮がちにパーテーションから覗き見る。

さすがに疲れているのかよく眠っている。
 
日頃からずっと働き詰めだし、ホントに体を壊しかねないと、ハラハラしていた。

しかも、強引に転がり込んだ手前何も言えないが、朝ごはんや夕飯なども何かと気にかけてくれたし、負担をかけてしまっていただろう。

自然に目が覚めるまで寝かせておこう。
そう思い、ベッドの横にあぐらをかいてしばらく小春の寝顔を見ていた。

すっぴんの小春は出会った頃と変わりなく可愛くて、ずっと見ていたい。 

そう思いながら、顔にかかった髪を耳にかけてやる。くすぐったかったのか、小春はふふっと笑い向きを変える。
「天使か?」と思わず呟く。

しばらく寝顔を見ていると、小春はみじろぎし始めて突然パッと目を開けた。

目が合った瞬間、「わっ!」とびっくりして体を起こした。
「おはよう。小春」

もっと側にいたくなって、思わずベッドの隅に横になる。さすがにシングルベッドに2人が寝ると狭いな。

まあ、至近距離で嬉しいけど。

何食わぬ顔で出かける相談をして、
ついでに日頃から気になっていた先輩呼びをやめさせるため、名前で呼ぶ事を提案した。

なぜか小春は恥ずかしがってなかなか呼ばない。

なんだよ。と若干不満に思い、呼ばなかったらペナルティをつける条件を出した。

小春が小さく俺の名前を呼ぶ。

ビックっと心臓が音を立てて脈打つ。
なんだこの破壊力。ヤバいな俺。

抱きしめたい衝動にかられ、その場を逃げるように外へ出た。

冷静になろうと車に乗る。
今、怖がらせたら小春からの信用を失う事になりかねない。やっと得られた信頼関係を自分で壊す訳にはいかない。

小春がもっと心を許すまで待つんだ。と、自分自身に言い聞かせ、
昂る気持ちをなんとか落ちつかせようと、深いため息をついた。

ふと外に目をやると、集合ポストの前に不審な男が現れた。
ジーンズに黒のTシャツ、頭に黒のキャップを被り、サングラスを付けている。
どう見ても不審者だ。

車の中から様子を伺っていた、修哉がおもむろにに男の横顔を写メで撮る。
コイツが小春の元店長じゃないといいが…。

とりあえず、小春には俺がいいと言うまで家から出ないようにメールする。

実は、セクハラ店長については探りを入れていた。
剣持に頼んで、探偵を雇ってそいつが今どこに居て何をしてるか探ってもらっている所だ。