「俺ちょっと、先輩さんに差し入れしてきます。」
片山は小春にニコッ笑いかけて
足速に飲料水売り場に行ってしまう。

「か、片山君。ダメだって、今、バイト中」
慌てて止めに行く。
止めないと。片山君暴走してる。
どうしよ〜
「あのね。先輩ね。昔すっごく怖くって、
中学生なのに片耳にピアス2個も開けてたんだよ!」

「それに、他校とケンカして勝ったとか、
高校生とケンカしてたとか、いろいろ噂があったりして、あんまり怒らすと危ないよ、
片山君なんて一瞬でとばされちゃうんだから。」

「すげー。俺飛ばされたいっす。
先輩さんコーヒーとか飲みますか?
ブラックと微糖だったらどっちがいいですかねー」
腕を組んで考えだす。

ダメだ。全然止まってくれない。
小春は焦って、泣きそうな顔になる。

「やっぱ、こっちっすね。」
片山は勝手に微糖に決めて、レジに向かい、勝手に精算して、
じゃ。っと手を上げて外に飛び出す。


テーブルにPCを置いて作業をしてる修哉の前まで行き、微糖コーヒーを両手で差し出す。

怪訝な顔で、片山を見る修哉

「こんばんは。
あの、小春さんの先輩さんですよね?
俺、小春さんのバイト仲間の片山っていいます。
すっげーカッコいいって今、話してたんすよっ。
マジ、リスペクトっす。
コーヒーもらって下さい。」

一瞬瞬きしてから、差し出されたコーヒーをありがとう。と言って、おもむろに受け取った。
「…先輩さんって…」
と、修哉がつぶやく。

「小春さん。終わるの10時なんで、もう少し待ってて下さい。

修哉は小春のいるコンビニに目を向けて話し出す。

「…小春が心配して見てるから、早く戻ってやって…」
困惑しながらも冷静に対処した。

「あの。俺も先輩って呼んでいいっすか?」
ニコニコ満面の笑みで話してくる片山に
なんだコイツは、と思いながらも

「…別にいいけど」とぽつんと言って
また視線をPCに戻し作業を始める。

「やった!じゃ。今後よろしくっす。」
と言って足速に店に戻っていった。

なんだったんだ?と首を傾げ店に目を向けると、困り顔の小春が頭をペコリと下げて、恐縮しているのが見える。

修哉はもらったコーヒーを開けてひと口飲む。
「あまっっ」とつぶやきながら小春を見ると、
少し安心したかのように、
ふわっと笑って片山と一緒にお店の奥に入って行った。