クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

さすが修哉さん抜け目ないなぁ。
そう思いながらセットを完成させていく。

「はい、出来ました。
お客様いかがですか?」

スマホを見ていた修哉さんが顔を上げる。

「なるほど、こうきたか。」
鏡越しに笑いかけられちょっと恥ずかしくなる。

「中学の頃の修哉さんの髪型を思い出しながらカットしました。」
サイドが短く前髪は若干長めで、長髪から考えると結構バッサリと切ってまるで見慣れない感じに緊張する。

「ありがとう、スッキリして軽くなった。」
立ち上がってぎゅっと抱きしめられる。
あの頃の記憶が走馬灯のように蘇るって、ドギマギしてしまう。

あの頃、憧れてずっと見つめているただのファンに過ぎなかったわたしが、やっと近づけたけど先輩後輩のままそれ以上にはなれず、後悔が残るお別れをして10年。

「何?どうした?固まって。」
怪訝な顔で見下ろされる。

「す、すいません。あの頃の修哉さんみたいでちょっと慣れなくて。緊張しちゃいます。」
なかなか目を合わす事も出来ないまま俯く。

不意に顎を持ち上げられて、無理矢理めを合わせてくる。

「小春?逃げないで、これから先は俺だけを見てて。」

軽く唇を合わせる。

啄むように角度を変えて何度もキスをする。

「この先何があっても離さないからな。」

「…はい。」

2人抱き合いながら見つめ合う。

「食事の後で渡そうと思ってだんだけど」
そう言って修哉さんはおもむろに胸ポケットから小さな箱を取り出す。

「開けてみて。」

もしやと思いながら恐る恐る蓋を開ける。
中には輝くダイヤモンド指輪が入っていた。

「えっ、えっ!!
これって……」

「婚約指輪。
ホントはもっと早く渡したかったんだけど、仕事頑張ってたし、
スタイリストになるまではと思って我慢してた。」

「あ、ありがとうございます…。」

修哉さんってそう言うの気にしない人だと思ってたし、
まさか今日もらえるなんて、感無量でただただ驚く。

「小春、手出して。」
そう言って、左手の薬指にそっと指輪をはめてくれた。

「うわぁー。綺麗。」
思わず声が弾む。

「ぴったりだな。良かった。」

「一生大事にします。」
涙が溢れそうになるのを懸命に堪える。

「俺も小春を一生大事にするから。」

この先何があっても2人助け合い、
支え合い、ずっと側に居られるように
と指輪に願いを込めた。