部屋に通されてまたびっくりする。
この部屋何畳あるの?ってぐらい広いし、続き間に寝室は別にあるらしい。
うち風呂と露天風呂がテラスに着いていて、庭がよく見える造りになっている。
まるで一軒家のように広々して2人だけの空間だった。
「わぁ。お庭綺麗です。」
雑草1つ無い枯山水の日本庭園が小さく作られていて、 周りから見えない様に垣根で囲まれている。
「良く芸能人がお忍びで使うらしい。
うちの社長の一押しだ。」
「さすが、社長さんですね。」
まだ会った事が無いがあのマンションの屋上に住んでるくらいの人だ。かなりのセレブに違いない。
「小春は部屋の風呂に入る?それとも、外の大浴場に行くか?」
「お部屋の方は後にして、大浴場に行ってみたいです。」
「そんな1日に何回も入るのか?」
「温泉ですよ?
みんな何回も入りたくて来るんじゃないですか?」
「ふーん。そういうもんか。」
「じゃあ。俺も着いてく。小春は迷子になりそうだから。」
笑って言う。
確かに広くて自分の部屋に戻れるか不安しかなかった。
「そのままに一回癒させて。」
そう言って、後ろから抱きしめられる。
急に触れられて心臓が跳ね返る。
「はぁ。このまま。ずっとこうしていたいな。」耳元で修哉さんが囁く。
振り返る事も出来ず固まってしまう。
「今夜、小春の全部をもらってもいいか?」
意味が分かって一気に顔が沸騰する。
「怖い?」
ぶんぶんと首を横に振る。
いつかそう言う日は来ると思っていたけど、まさか今日とは思わず、
いやそうかもと頭の隅で思いながら気付かない振りをしていた。
ずっと我慢させていたと思うし、勇気を振り絞らなければ。
「私はどうすればいいですか?」
小さな声で問う。
「何も。俺にただ身を委ねてくれればいい。」
「…はい。」
もはやら下を向いて俯くしか出来ないほど緊張してしまう。
修哉さんはふっと笑って、つむじに優しくキスをしてそっと離れた。
「それまでは温泉を充分に堪能して。」
そんなの無理。両手で顔を隠ししばらく固まってしまう。
「大浴場いくんだろ?」
修哉さんが何事もなかったかの様に平然と話しかける。
「…行きます。」
夜までの時間ずっと意識しながら過ごすの?私の心臓が心配になる。
修哉さんをおもむろに恨みがましく睨み、お風呂に行く支度をそそくさとする。



