修哉も起きてきて、朝ごはんの支度をしている小春をボーっと眺めている。

「コーヒー淹れましょうか?」
小春が声をかけると、「俺がやる」と近づいてきた。

「小春、何かあったらすぐ連絡して、いや、何かなくても仕事場着いたら連絡して。」

小春はくすくす笑って応える。
「修哉さん、お父さんみたいになってますよ。
分かりました。
着いたらちゃんとメール入れますね。」

まだまだ不安を感じる修哉だが、小春の自由を奪うのはいけないと気持ちを制して送り出す事にする。

朝食を一緒に食べて玄関先で行ってきますをする。
「お弁当も作ったので良かったら食べて下さいね。」

「…ありがとう。」
修哉は送り出すと決めたものの小春の事が心配で仕方がない。

「じゃあ。行ってきます。」
小春は踵を返して玄関ドアを開けようとする。
「あ、ちょっと待って。
ごめん。一回抱きしめさせて。」

修哉がぎゅっと抱きしめてしばらく動かない。
「し、修哉さん、電車の時間に間に合わなくなっちゃうので…」
躊躇いがちにそう言うと、
思い切って修哉の頬にチュッとキスをして
目線も合わさず「行ってきます。」と玄関を飛び出した。