本当に好きじゃなかったら君が選んだ物に似合うよう自分を変えたりなんてしない。




君からのサプライズなんて受け取らない。




こんな口紅毎日使って減らしたりなんてしない。




涙が嗚咽が溢れ出る。



口元を抑えると手についた赤が唇に移った。




私はそれを更に擦る。




次は、私の思い出からは消えないように心からは消えてしまうように。




そんな願いを込めて涙とともに口紅を擦り落とす。




―― 次はこれぐらいの口紅を選んでくれる人と出会えますように。




私は涙で程よく薄れた赤色を見ながら頭の片隅でそう思う。




真っ赤な口紅で鏡を汚したのは午前0時丁度のことだった。