「リル、こちらも荷物を捨てて、出来るだけルクに近付く……いいね!?」
「も、もちろん!!」

 あたしの答えにザックへ手を掛けるアッシュ。けれどその時、風を斬る鋭い音が何処からか響いて、ルクのパラシュートが一気にひしゃげ、近くの大木に……吸い寄せられた!?

「一体あれは……?」

 呆然としたアッシュの呟きが終わる頃、あたし達も地面に辿り着いた。急いで全てを置き放し、ルクの吊るされた木へ向かう頭上を、もう一筋赤い光線が流れていく。それは……逃げてゆく飛行船を狙っているように思われた!

「タラお姉様……!」

 『盾』が山へ到着してしまった今、遮る物はもう何もないのだ!

 どうしよう……飛行船に何か遭ったら……お姉様とベビちゃんが!!

 光は遥か遠くても飛行船を着実に捉えていた。昼間の流星のように真っ直ぐ貫かれる赤いライン。けれどそれは邪魔する何かに阻まれた!

「シアン……お兄様!?」

 突然飛び出してきたグライダーの左翼が、砕かれながら光を屈折した。が、お陰でグライダーも飛べる(すべ)を奪われて失墜する! 刹那落ちるグライダーから飛び降りた人影が、見事にパラシュートを開かせた──でも!!

 今一度放たれる光線。今度はシアンお兄様を狙っている!?

「お兄様っ──!!」

 駆け寄る足先が震えた。あたしの叫びはただ無力に虚空へ消えていき……けれど光線は再び何かに阻まれて、お兄様を傷つけることはなかった! 何か……じゃない。あれは多分グライダーの砕けた翼だ! でもどうやって、飛び散った破片が上空に舞い上がってきたのだろう??

 無事木々の狭間に消えるパラシュート。飛行船も既に見えない所まで退却している。おそらくこれで二人は大丈夫だ。でも……ルクとシアンお兄様を救ってくれたのは一体──!?