ママから逃げるように数歩下がったあたしは、後ろの街灯に照らされて、その姿を見たママの顔がハッと驚いた。そうだった……髪色でバレちゃう!

「ちょっと、どうしてジュエルを嵌めてるの! 今すぐ帰って保管庫に戻しなさい。……お願いよ、ルヴィ。嫌な予感がするの。ママがパパを追いかけるから、あなたはお家でじっとしていてちょうだい!」
「ママまで……?」

 二人して嫌な予感がするなんて、尋常じゃない……!

 その時ママの顔がパッとあたしの後ろの空を見上げ、それはみるみる内に色を変えた。慌てて振り向いたあたしの瞳は、刹那に真っ赤に染められた。

 王宮のある方角の夜空が、禍々(まがまが)しい(くれない)の光に包まれている!

「ルヴィ! 急いで戻りなさいっ!!」
「ママっ……!」

 ママはそう叫びながら、あたしの横をすり抜けて走り去った。一瞬の内にパパが消えていった角を曲がって、ママの姿も見えなくなってしまった。

 嫌だ……パパとママに何か遭ったら……!!

 あたしは言われたことを守る気持ちになんてなれなかった。急いで二人の後を追いかけ走る。それがまさか……あんな事態を招くことになるとは思いもよらずに──!!