『これ以上、させるかぁぁぁ──っ!!』

 サリファはドスの効いた恐ろしい声で咆哮し、シュクリの山頂へ戻ろうとうねり始めた。まるでトカゲの尻尾切りのように今までジュエルに吸い込まれていた霧の端がプツンと途切れ、あたしから離れ去ってゆく。霧は竜巻と化し、エルムの幻影が高く巻き上げられた。やがて渦は傀儡(くぐつ)を押し潰すように回転を速めて、細く長く天へと昇って……ついに弾き飛ばしてしまった!

『エルム、じゃ、ない……? どこだぁぁっ!! エルムぅぅぅ──っ!!』

 捕食する獲物を見つけんと辺り構わず探し回る肉食獣の如く、サリファがシュクリの火口へ驚く速さで戻ってゆく。 

 ヤバいぃ……あの勢いじゃ、すぐにエルムが見つけられてしまう!

「エルムっ、早くこっちへ──!!」
「シュクリ──っ!!」

 ──え!?

 あたしが飛び降りた穴に見えたのは、既にエルムに戻ったエルムだった。その後ろ姿はシュクリ内部へ向けてその名を叫んでいた。と同時に山全体が一瞬震えた気がした。そしてシュクリが──

「噴火……した!?」

 眼下のインターデビルとは比べようもないくらいの噴煙が、と共にサリファが丸ごと押し出され……思いっきり吹っ飛ばされた!?

「きゃああっ!!」
「え!? エルム!!」

 その反動でエルムは穴から滑り落ちてしまったらしかった。あっと言う間に小さくなっていくエルムに全速力で滑空する。あと少し、もう少し……あたしに向けて手を伸ばすエルムへ、あたしも必死に手を差し伸べた──!!