(リルヴィ……驚かないで聞いて。シュクリ山がヴェルから分裂した。だから島本体は今も海の上だよ。サリファとアタシ達だけが、シュクリと一緒に空を飛んでる)
(えぇ!? そ、それじゃ、パパ達は!?)
(えぇと……うん、大丈夫! みんなもうシュクリの麓を抜けたから、無事に本体側にいる!)
(よ、良かった~~~!!)

 喜べることなど、とりあえずでしかないかも知れないけれど。五人と二匹が安全な場所へ避難出来たことに、あたしはひっそり安堵の息を吐いた。と言っても島の三分の一に当たるシュクリ山が突然飛んで行ってしまったのだから、地上は相当な大騒ぎだろう。大きな地震や崖崩れ、もしかしたら津波なんかも起きているかも……そんな心配に蒼ざめてゆくあたしを察して、『ジュエル』が地上の様子を脳裏に映し出してくれた。

 大勢の人々が呆けたように空を見上げているヴィジョンが見える。やがて視界はズームアウトして、俯瞰(ふかん)した街並みは徐々に小さくなり、島全体を見渡すことが出来た。海岸線はいつもの通り穏やかな波を立てているだけ。中央部、シュクリが(そび)えていた部分にはポッカリ巨大な窪みが出来ているけれど、他には特に問題はなさそうだ。こんなに被害が出ていないのは『ラヴェンダー・ジュエル』のお陰だったりするのだろうか? それとももしかして隣にいるエルムが? いえ……出来ればシュクリの恩恵であると願いたかった。ヴェルの神様が悪魔のようなサリファの言いなりになっているなんて、そんな怖しいこと信じたくないもの!