「お願いパパ、一度だけ! エルムはココとは違う次元に捕まっているの。ジュエルさえいればきっと助けられる……必ず無事に戻ってくるから!」
「……」

 紫の髪と紫の双眸に変わったあたしを見下ろして、パパは何も言わなかったけれど。

 ジュエルがあたしを選んだことは、疑いようもなく明らかだった。そして……例えサポート役としてついて行けたとしても、ジュエルを持たない自分はむしろ足手まといになるに違いないと、パパは気付いてしまったのだと思う。そう……ママがサリファに(さら)われて、あたしが一緒に行くと言ったあの時のように。

 今度はパパとあたしが同時に窮地に陥ったら、ジュエルは両方を助けるためにきっと無茶をしてしまう……そう思い到ったパパは、口惜しそうに唇を噛み締めていた。やがて一つ大きく息を吐き出しながら、諦めるように瞳を閉じた。

 それを承諾と受け止めて、パパの向こうのアッシュに目を向ける。更に呆然として固まる隣のルクに。

「アッシュ、ルク……みんなを宜しくね! 必ずエルムを救って、二人の元へ帰るから!!」
「うん。こちらは僕達に任せてくれ、リル」
「ルヴィ……きっと、約束だよ!」
「うん! アッシュ、みんなに説明宜しくね! ルクも約束守ってくれたのだもの、あたしも絶対守ってみせる!!」

 二人の笑顔にあたしも笑顔で頷いて、最後に心配そうに見詰めるツパおばちゃんに目を向けた。

「おばちゃん、大丈夫だよ……ジュエルもエルムも、この時を待っていたの。きっと二人が協力してくれる。だからみんなと一緒に待っていて。そしてあたしが戻ってきたら……──」
「……戻って、きたら?」

 途切れた言葉に含みを感じたツパおばちゃんは、続きを催促するように繰り返した──けれど。